IPCC第2次評価報告書(SAR)概要
第2次評価報告書(Second Assessment Report: Climate Change 1995)は、第1次評価報告書を大幅に改訂増補したものであり、1990年以降に得られた地球温暖化問題に関する新たな科学的知見を集大成し、1995年に発表された。
同報告書はその序文で 「全球平均気温および海面水位の上昇に関する予測から、人間活動が、人類の歴史上かつてないほどに地球の気候を変える可能性がある」、「温室効果ガスの蓄積に対する気候系の反応は、時間スケールが長いことから、気候変化は多数の重要な点に関し、すでに取り返しのつかない状況にあるといえる」と述べ、第1次評価報告書と比較し、一層踏み込んだ言及を行った。また、第1次評価報告書に比べ、より経済学的評価に重点がおかれた。
なお、同報告書は、1996年のUNFCCC第2回締約国会合(COP2)に提出された。(第2次評価報告書の一部は、1994年「特別報告書」として先行してまとめられ、1995年に開催された UNFCCC COP1に提出されている)
構成
- 第1作業部会報告: 気候変化の科学
(The Science of Climate Change) - 第2作業部会報告: 気候変化の影響・適応・緩和:科学的及び技術的分析
(Impacts, Adaptations and Mitigation of Climate Change: Scientific-Technical Analyses) - 第3作業部会報告: 気候変化の経済的・社会的側面
(Economic and Social Dimensions of Climate Change) - 「UNFCCC条約第2条の解釈における科学技術的情報に関する統合報告書」※
(※当初、「UNFCCC第2条(目的)」に関して、作業部会報告とは別の独自の内容を記載すべく検討されていたが、それらは承認されず、結果として、本統合報告書は作業部会報告のSPM(政策決定者向け要約)の集約版となった。)
主な内容
- 人間活動の影響による地球温暖化が既に起こりつつあることが確認された。(第1次評価報告書では、まだはっきりと評価しきれなかった人為的影響について、より明確な表現をとるとともに、水資源/農産物/生態系/健康/居住等に関する影響についてより詳細な予測を提示した。)
- 過去100年間に、全球平均地上気温は0.3〜0.6℃上昇し、海面は10〜25cm上昇した。(第1次評価報告書とほとんど同様の数値)
- (特段の対策がとられない場合)、21世紀末までに、全球平均地上気温は0.9〜3.5℃)の上昇が予測される。(第1次評価報告書では約1〜3℃の上昇を予測)
- (特段の対策がとられない場合)、21世紀末までに、全球平均海面水位は15〜95cmの上昇が予測される。(第1次評価報告書では35〜65cmの上昇を予測)
- 大気中の温室効果ガス濃度を安定化し、地球温暖化の進行を止めるためには温室効果ガスの排出量を将来的に1990年の排出量を下回るまで削減する必要がある。
- 省エネルギーなどの経済的な利得を得ながら、かなりの温室効果ガス排出削減が可能となる技術がある。